お口ポカンのデメリットと原因、治療法について医師が解説
こんにちは 戸塚そらいろ歯科です。
前回のMFTに関係するお口ポカンについて説明したいと思います。
1)お口ポカンとは?
2)お口ポカンのデメリットと原因
3)治療法(MFTについて)
お口ポカンとは?
リビングでテレビを見ているときやゲームをしているとき、いつもお口がポカーンと空いている。
小さいお子さんのうちは可愛らしく見えますが、ある程度大きくなってからもお口が開いたままだと、ちょっとだらしなく見えてしまいます。
このお口ポカンとは専門用語では口唇閉鎖不全と呼ばれる疾患となります。ですから、正しい知識と治療法によって治していく必要があります。
では、なぜそのようなお口ぽかんが起きてしまうのか。
お口が開いてしまう原因として、もっとも多いのが「口呼吸」によるもの。
近年、口唇閉鎖不全(お口ポカン)の子供が増えている
近年、口唇閉鎖不全の子供が増えているのが全国調査でもわかってきています。
3~12歳の小児について、口唇閉鎖不全の実態とその関連項目に関する全国調査で
「全身疾患の既往」、「鼻・のど・耳の状態」、「咬合状態」、「飲食習慣」、「口唇・歯肉」に関するものなど53項目で、保護者に記載してもらったところ「日中よく口を開けている」小児の割合は30.7%でした。
年齢別では、3歳児では2割弱ですが、年齢が上がるに従い割合は有意に増加傾向を示し、12歳の時点では4割程度まで上昇することがわかりました。
参考資料:小児期の「口呼吸」と「口唇」に関する意識調査からみえてくるもの.小児歯科臨床,20(7):23~30,2015.
お口ポカンのデメリットと原因
実はこの口呼吸、とっても危険なことなのです。
虫歯になりやすくなる
口呼吸によってお口の中が乾燥してしまうと、唾液が分泌されにくくなってしまいます。
通常、歯は、唾液に含まれる成分によって再石灰化し、初期の虫歯を修復しているのですが、唾液が少なくなってしまうとこの働きが弱くなり、虫歯の進行がしやすくなってしまいます。また、唾液にはリゾチームといった酵素も含まれており殺菌作用もあります。
歯周病になりやすく、口臭もきつくなる
唾液の量が少なくなると、唾液の殺菌作用によって洗い流されていたお口の中の細菌も繁殖しやすくなってしまいますので、歯周病にもなりやすくなります。
お口の中の細菌の量が増えると、歯周病になりやすいだけではなく、口臭もきつくなります。
出っ歯になりやすい
口呼吸をしていると、上あごの成長に影響が出てしまいます。
通常、お口を閉じている状態では舌が上あごにくっついている状態になっており、この下の力によって上あごが広げられ、発育していきます。
ですが、口呼吸により口が開いている状態だと、常に舌が下にある状態ですので、上あごを広げるための力が作用しません。上あごが正常に広がらないと、歯が生えてくるスペースが確保できずに前に飛び出し、出っ歯になってしまうのです。
顔にゆがみが発生しやすい
口呼吸の人は唇に力が入らないため、お口周りの筋力がどんどん低下してしまいます。
そのため、頬や口元のたるみはもちろん、お口の筋肉とつながっているお顔全体の筋肉にも影響を及ぼし、目や頬まで垂れ下がります。
また、アデノイド顔貌と呼ばれる独特の顔つきになってしまう事にもつながります。
風邪やインフルエンザなどに感染しやすい
鼻で呼吸をしている人の場合、空気中のウイルスやほこりを吸い込んでも、鼻毛や鼻水などがフィルターとして機能し、半分以上のウイルスや細菌を防ぐことが期待できるといわれています。
ところが、口で呼吸をしている場合、このフィルターが機能せず、ウイルスが直接体内に入ってくるため、インフルエンザなどにも感染しやすくなります。
また、鼻呼吸の場合は、鼻の中で空気の温度や湿度を調整できますが、口呼吸の場合は冷たく乾燥した空気が直接、気道や肺に送られてしまうので、喉や肺を痛めてしまい風邪をひきやすくなります。
いびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすい
口呼吸は、いびき発生の原因にもなります。いびきをかいている状態での睡眠は熟睡できず、疲労もなかなか取れません。
また、口呼吸により舌に力が入りにくくなってしまうと、睡眠時に舌が起動を塞いで睡眠時無呼吸症候群になりやすい状態を作ってしまいます。
お口ポカンでおこる口呼吸の原因と改善方法
さまざまな悪影響がある口呼吸。改善するためには、まずは口呼吸になってしまっている原因を知ることが必要です。
1、口周りの筋力が弱っている
特に小さなお子様に多いのが、お口を閉じる筋肉が発達していないために口が開いている状態が習慣となり、そのまま口呼吸になってしまうケースです。
もし、ずっとお口を閉じている状態が疲れてしまうといった場合は、お口周りの筋力が弱い可能性が高いですので、トレーニングにより、意識的にお口周りの筋肉を鍛えてあげる必要があります。
また、お口ポカンの癖があると、舌の筋肉も弱くなり滑舌が悪くなったり、低位舌という舌の位置が変わってしますのです。
一般的には、楽な姿勢をとっているとき、舌の先端は上の前歯の裏側(この位置をスポットポジションと言います)にありますが
お口ポカンの状態が続くと、常に下側に位置するようになり、下の前歯を過度に押すような力が働きます。
それにより噛み合わせが悪くなってしますのです。
2、歯並びが悪く口が閉じにくい
出っ歯のお子様の場合は口が閉じにくく、口呼吸になりがちです。
このような場合は、舌のトレーニングと併用して歯並びを改善するための矯正治療も行ってあげる必要があります。その場合でも、早い段階で治療を開始すれば費用も最小限で済みますので、なるべく早めにご相談されることをおススメします。
3、もともと舌が短い(舌小帯短縮症)舌小帯短縮症について
舌小帯とは舌の裏側の真ん中にある、口の底とつながっている筋のことを言います。
舌小帯短縮症とは、この舌小帯が生まれつき短い状態のことを言い、重度の場合は、舌の動きが悪くなるため発音がうまくできなかったり、筋肉のバランスが崩れて口呼吸となったりします。
目安として舌を上に上げた時、舌がハート型になります。
このような場合は「舌小帯切除術」という舌の裏の筋を切ってあげる治療をします。(保険適応)
筋を切ると舌が自由に動くようになりなりますが、だからと言って口呼吸が自然と治るわけではありませんので、手術の前後にMFTというお口や舌の筋肉のトレーニングも行ってあげる必要があります。
4、アレルギー性鼻炎などで鼻が詰まっている
アレルギー性鼻炎、蓄膿症等、鼻づまりによって口呼吸になってしまっている場合は、まずは耳鼻咽喉科での治療を受けることが必要です。
治療を受けた後も、口呼吸が習慣になってしまっている状態ではなかなか鼻呼吸にできないケースも多いので、意識的に口を閉じ、鼻で呼吸するようにしましょう。
5、口呼吸が習慣化している
気を抜くと口が開いて、口呼吸になってしまう。起きている時は鼻呼吸しているけど、寝ている時は口呼吸になってしまう。そんな方も多いのではないかと思います。
そういった場合は、「鼻呼吸促進口閉じテープ」という唇を閉じるためのテープを活用してみるのもよいでしょう。 対処療法にはなりますが、いびきの防止などの効果もあります。
口唇閉鎖不全(お口ポカン)治療法
1)耳鼻咽喉科への受診
アレルギー性鼻炎等の慢性的な鼻炎や花粉症によって、どうしても口呼吸せざるを得ないという方は結構いるのではないでしょうか。
当院でも、よく親御さんからそのような話を聞きます。まずは、耳鼻咽喉科での受診をおすすめします。
2)口腔周囲筋のトレーニング(MFT)
スポットポジション
上記でも述べたように、安静時にある舌の位置をスポットポジションと言います。
図にあるようなスポットの位置に舌の先端が触れている状態が望ましいです。
ただし、歯に触れてしまっている状態だと低位舌と同じように歯を押してしまうので注意が必要です。
アイスの棒でこの位置を数秒間押して記憶させてから行うと、トレーニングが円滑に行えます。
あいうべ体操
この体操は、みらいクリニックの今井先生が考案されたもので口腔周囲筋をしっかりトレーニングするのに有効です。
ポッピング
舌尖をスポットポジションにつけ、舌全体を口蓋(口の天井)に吸い上げ、口を大きく開けて舌小帯をできるだけ伸ばして
舌で口蓋をはじくようにポンツと音を立てる。
このトレーニングは舌筋を鍛えると同時に舌小帯を伸ばすことができます。
リップトレーサー
舌を尖らせて上唇の口角(口の一番外側)に置き、10秒数えながら反対側の口角に向かって唇の輪郭をなぞるように動かす。
戸塚そらいろ歯科では、舌小帯切除術やMFTも行なっているので、気になる方は一度ご相談ください。